悪役が主役になったとき、物語はどんな姿を見せるのでしょうか。
映画『マレフィセント』は、ディズニーの名作『眠れる森の美女』を“邪悪な妖精マレフィセント”の視点から描いた実写映画です。
アンジェリーナ・ジョリーが演じる圧倒的な存在感と、映像美に包まれたダークファンタジーの世界は、公開当時から大きな話題を呼びました。
全世界で興行収入7億5千万ドル、日本でも65億円を超える大ヒットを記録した本作。
2025年9月19日には金曜ロードショーで放送されることもあり、改めて注目を集めています。
この記事では、映画の見どころや感想、考察を交えながら、『マレフィセント』の魅力を徹底レビューしていきます。
『マレフィセント』が公開された2014年当時、最も話題になったのは「ディズニーが悪役を主人公にした」という大胆な挑戦でした。
これまでのディズニー映画では、悪役はあくまで主人公の前に立ちはだかる存在。しかし本作では、悪役の背景にある“心の傷”や“喪失感”に焦点を当てています。
アンジェリーナ・ジョリーが演じるマレフィセントは、ただのヴィランではなく、裏切られた悲しみを抱えながらも愛を求め続ける複雑なキャラクター。
その二面性が、多くの観客を引き込み、今なお語り継がれる存在感を生み出しました。

ヴィランを主役にしたことで、ディズニーの新しい扉が開いた感じがするね。

悪役なのに主役って…ちょっとワクワクするかも!

当時は賛否もあったけど、映画としての挑戦はすごく価値があるわ。
🎬 『マレフィセント』作品情報
- 原題:Maleficent
- 公開年:2014年
- 監督:ロバート・ストロンバーグ
(美術監督として『アバター』『アリス・イン・ワンダーランド』などを手がけ、本作で映画監督デビュー) - 主演:アンジェリーナ・ジョリー(マレフィセント役)、エル・ファニング(オーロラ姫役)
- 上映時間:97分
- 制作国:アメリカ
- 興行収入:全世界で約7億5千万ドル(当時のレートで約1,100億円)、日本では65億円を突破する大ヒット
『マレフィセント』は、ディズニーの古典的名作『眠れる森の美女』(1959年)を、悪役マレフィセントの視点から大胆に描き直した実写映画です。
監督のストロンバーグは、これまでアカデミー賞受賞歴もある美術監督であり、その映像美術の経験が存分に活かされています。
主演のアンジェリーナ・ジョリーは、自らマレフィセント役を熱望し、造形の細部(頬骨のシャープなラインやツノの形状)に至るまで意見を反映させたといわれています。彼女の存在感こそが、本作の最大の魅力のひとつです。

ストロンバーグ監督は美術畑出身。だから映像の迫力が独特なんだよ。

アンジー自身が衣装やメイクに意見を出していたのも有名な話よね。

97分って思ったより短い!サクッと観られるのもいいなあ。
📖 あらすじ(ネタバレなし)
人間界と妖精界の境に広がる、美しくも不思議な“ムーア国”。そこに住む妖精マレフィセントは、幼い頃から強い魔力を持ち、仲間たちに慕われる存在でした。
しかし、信じていた人間の裏切りによって心に深い傷を負い、復讐の感情に支配されていきます。
やがて、王となったその男の娘――オーロラ姫の誕生を祝う宴で、マレフィセントは「16歳の誕生日に糸車の針に触れ、永遠の眠りにつく」という呪いをかけてしまいます。
やがて成長していくオーロラ姫を見守るうちに、マレフィセントの心には思いがけない感情が芽生え始めます。
“悪役”として知られる彼女の姿は本当に邪悪なのか、それとも――。

有名な“糸車の呪い”のシーンはここで出てくるんだね!

でも物語はそこからが本番。オーロラとの関係性に注目してほしいわ。

そう、従来の“眠れる森の美女”とは全然違う展開が待ってるんだ。
✨ 見どころ① 映像美とデザイン
『マレフィセント』の大きな魅力のひとつは、圧倒的な映像美にあります。監督のロバート・ストロンバーグは、美術監督として『アバター』『アリス・イン・ワンダーランド』などでアカデミー賞に輝いた経歴の持ち主。本作ではその経験が存分に発揮され、妖精の棲む幻想的な“ムーア国”と、人間界の重厚で冷たい宮殿が鮮やかに対比されています。
特に目を奪われるのが、マレフィセント自身のビジュアルです。頭上にそびえる黒いツノ、漆黒のマント、そしてアンジェリーナ・ジョリーの鋭い頬骨を強調するメイク。現実離れした造形でありながら、彼女が身にまとうだけで説得力を持つのは、まさに俳優本人のカリスマ性があってこそでしょう。
また、CGと実写を融合させた魔法表現も圧巻。光り輝く精霊や、森の動物たちのユーモラスな動きなど、ダークな物語の中にディズニーらしい華やかさが織り込まれています。映像的な満足度だけでも、一見の価値がある作品です。

アンジーのビジュアルは映画史に残るレベル。ツノがあんなに似合う人はいないね。

映像がすごすぎてテーマパークのアトラクションみたいに感じたよ!
👉 ファンタジーの独特な映像世界といえば、ティム・バートン監督が手がけた『チャーリーとチョコレート工場』も印象的です。奇想天外な工場内部のデザインや色彩は、同じく“異世界に迷い込む体験”を味わえる作品としておすすめです。
➡️ 映画『チャーリーとチョコレート工場』レビューはこちら
🎭 見どころ② 演技と人間ドラマ
『マレフィセント』を単なるダークファンタジーで終わらせていないのは、俳優陣の演技によるところが大きいでしょう。
まず圧倒的なのがアンジェリーナ・ジョリー。彼女はマレフィセントを“悪の象徴”としてだけではなく、裏切りに傷ついた女性、そして次第に母性的な愛情を抱く存在として多層的に演じ切りました。冷酷な表情から、オーロラを見つめる優しいまなざしへと変化していく芝居は、観客に「悪役なのに共感してしまう」体験を与えてくれます。
一方、オーロラ姫を演じたエル・ファニングも印象的です。無垢で明るいオーロラの存在が、復讐に囚われたマレフィセントの心をほぐしていく。その関係性は母と娘のようであり、同時に失われた純真さを取り戻していく鏡像のようでもあります。
そして忘れられないのが、クライマックスの“オーロラが目覚めるシーン”。伝統的な「王子のキス」による目覚めではなく、マレフィセントの深い愛情が鍵となる展開は、多くの観客に驚きと感動を与えました。あの瞬間にこそ、本作が提示する「愛のかたち」が凝縮されており、思わず涙腺を刺激されます。
脇を固める俳優たちも存在感を発揮。シャールト・コプリーが演じるステファン王は、裏切り者としての冷酷さと弱さを併せ持ち、物語をより切実なものにしています。
また、アニメ版『眠れる森の美女』をよく知る人の中には「実写版のマレフィセントは悪役に徹しきれていない」と感じる声もあります。確かにアニメのマレフィセントは徹頭徹尾“恐ろしい妖精”でした。しかし私(筆者)はアニメ版の知識が薄かったぶん、実写ならではの解釈を新鮮に受け止められましたし、オーロラが目を覚ます場面では素直に胸が熱くなり、うるっとしてしまいました。
本作は派手な魔法バトルだけではなく、愛と赦しを描く人間ドラマとしても楽しめるのです。

あの目覚めの場面で“真実の愛”の意味がガラリと変わったのよね。

観客の涙を誘うのは、まさにあの母と娘のような絆だったと思う。
🎙️ 吹替版の魅力
『マレフィセント』は、字幕版だけでなく日本語吹替版も完成度が高いことで知られています。
マレフィセント役の深見梨加さんは、アンジェリーナ・ジョリーの威厳ある声をしっかりと再現。
さらにオーロラ姫を演じた上戸彩さんの柔らかい声は、姫の純粋さと温かさをより際立たせています。
字幕版で俳優本人の声を堪能するのも良いですが、吹替版なら映像に集中でき、特に家族で観る際にはおすすめです。

吹替えもかなり良かった!深見梨加さんの声がマレフィセントにしっかりハマってたね。

字幕派も吹替派も満足できる完成度よ。
🤔 考察:「悪役?いい人?」論争
『眠れる森の美女』では、マレフィセントはただ恐ろしい呪いをかける“邪悪な妖精”として描かれていました。
ところが本作『マレフィセント』は、その悪役像を根底から覆します。
マレフィセントは確かにオーロラに呪いをかけます。しかしその背景には、かつて愛した人間ステファン王の裏切りによって翼を奪われ、心を閉ざした過去があります。
彼女の怒りと悲しみは、単なる「悪意」ではなく、「奪われたものを取り戻したい」という人間らしい感情の表れなんです。
観客の間でも、この描写は大きな議論を呼びました。
「ひどい、やっぱり悪役だ」と切り捨てる声がある一方で、「裏切られたからこそ共感できる」「むしろかわいそう」という声も少なくありません。SNSを見ても「悪役なのに泣いた」という感想が多く並んでいました。
個人的には、この映画を観ながら「本当に悪なのは誰だろう?」と何度も考えさせられました。
ステファン王は欲望と権力のために、かつて愛した相手を裏切り、尊厳そのものである翼を奪ってしまう。そう考えると、人間の欲望こそが「真の悪」なのでは?と感じたのです。
思えばディズニー作品には、こうした「人間の欲望」を悪として描く例が少なくありません。
『ウィッシュ』(2023)のマグニフィコ王は、人々の願いを独占しようとしたし、『インサイド・ヘッド』や続編では、人間の感情そのものが物語の中心に据えられていました。
『マレフィセント』もまた、単純な勧善懲悪を超えて、人間の心の欲望や葛藤を描こうとしている。だからこそアニメ版とはまったく違う印象を受けるのだと思います。
マレフィセントは悪か善か――。
本作が提示するのは、善と悪の単純な二分法ではなく、人間の複雑な感情そのもの。
だからこそ、彼女は“誤解されたヴィラン”として、多くの人に愛され続けているのでしょう。

悪役に見えても、裏切ったのは人間のほう。どちらが“悪”なのか考えさせられるね。

僕は人間のほうが怖かった…。翼を奪うなんて残酷すぎるよ。

人間の欲望は魔法より怖いわよね。
🔮 象徴アイテムの意味
『マレフィセント』を語るうえで欠かせないのが、彼女を特徴づける象徴的なアイテムたちです。これらは単なるビジュアル要素にとどまらず、物語やキャラクター性を深く表しています。
👑 ツノ
黒く鋭くそびえるツノは、マレフィセントの威厳と恐怖の象徴です。悪役としての存在感を一目で示すデザインでありながら、同時に彼女の“異質さ”や“孤高さ”を表すものでもあります。ハロウィン仮装で最も注目されるのも、このツノのインパクトが大きいからでしょう。

ツノは力の象徴だけど、同時に孤独のシンボルでもあるのよ。
🕊️ 翼
彼女の大切な翼は、信じていた人間に裏切られ、奪われてしまいます。翼は「自由」や「尊厳」の象徴であり、それを失ったことがマレフィセントを復讐へと駆り立てました。そして翼を取り戻す過程こそが、彼女の物語の大きな転換点となります。
🐦 カラス(ディアヴァル)
マレフィセントの忠実な従者であるカラスのディアヴァルは、魔法によって人間や動物の姿に変えられ、彼女を支え続けます。孤独なマレフィセントにとってディアヴァルは心を許せる数少ない存在であり、忠誠と友情の象徴といえるでしょう。
これらのアイテムを通して、本作は“ただの悪役”ではない彼女の内面を映し出しています。

僕はディアヴァル推し!相棒キャラとして最高にカッコいい!
🧚 3人の妖精たち
オーロラ姫を16歳になるまで育てたのは、3人の妖精――ノットグラス、フリットル、シスルウィットです。
本来であればオーロラを守るはずの存在でしたが、彼女たちは少しドジで頼りないところがあり、しばしばコミカルな騒動を引き起こします。
私(筆者)自身、最初に観たときは「こんなに頼りなくて大丈夫?」と思ったくらいでしたが(笑)、その不完全さが逆に物語にユーモアを与えてくれているんですよね。重厚なテーマが続く中での貴重な息抜きであり、同時に「完全な善人なんていない」というディズニーらしいメッセージにも感じられました。
さらに大事なのは、彼女たちが不器用だったからこそ、オーロラとマレフィセントが自然と交流する機会が生まれた点です。もし完璧に守っていたら、あの母と娘のような絆は築かれなかったかもしれません。
一見するとコミカルな脇役に見えて、実は物語の大きな橋渡し役を担っていたとも言えるでしょう。

3人の妖精ってドジだけど、観ててほっこりするよね!

物語に笑いを入れつつ、運命を導いた存在でもあるんだ。
🌍 関連キャラ・派生文化
『マレフィセント』は映画単体として楽しめるだけでなく、その人気はさまざまな形で広がりを見せています。
🐦 ディアヴァルの存在感
マレフィセントと共に行動するカラスのディアヴァルは、ただの従者ではなく、物語の中で彼女の心の支えとなる重要な存在です。変幻自在に姿を変える能力は物語を彩り、観客の記憶にも残ります。彼の存在があったからこそ、マレフィセントは孤独に押しつぶされずにいられたのかもしれません。
🆚 他のディズニーヴィランとの比較
マレフィセントは「最強のディズニーヴィラン」と称されることもあります。アースラやジャファーなどと比べても、魔力の強大さや存在感は群を抜いています。しかし本作では、“悪の強さ”だけでなく“人間的な弱さ”も描かれたことで、単なる悪役以上のキャラクターへと昇華しました。
🕹️ ゲーム・グッズ展開
スマホゲーム『ディズニー ツムツム』では「マレフィセント」「マレフィセントドラゴン」などが最強クラスのキャラクターとして人気。さらに『キングダムハーツ』シリーズでも重要な敵キャラとして登場し、ファンの記憶に強く刻まれています。
また、仮装アイテムや関連グッズも毎年ハロウィン時期に人気を集め、キャラクターとしての認知度はディズニープリンセスに匹敵するほど。映画から派生した文化的存在感の大きさを感じさせます。

ツムツムで“マレドラ”を使いこなした人、多いんじゃないかな?

ゲームでも映画でも、ヴィランの中で特別扱いされてるのが面白いわね。
📺 配信情報と視聴方法(配信・DVD情報)
視聴手段 | 配信・販売状況 |
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Amazonプライム・ビデオ | ○ レンタル/購入配信中 |
Netflix | × 配信なし |
U-NEXT | ○ レンタル配信中 |
Hulu | ○ レンタル配信中 |
TSUTAYA DISCAS | ◎ DVD/Blu-ray レンタル対応 |
DVD(販売) | ◎ 新品・中古ともに取り扱いあり |
Blu-ray(販売) | ◎ 新品・中古ともに取り扱いあり |
Disney+ | ◎ 見放題配信中 |
上記の配信・販売状況は【2025年8月時点】の情報です。
🔍 配信状況を調べる際の目安としてご覧いただき、ご視聴・ご購入の際は各サービスの最新情報をご確認ください。
📺️ 地上波での放送情報
『マレフィセント』は 2025年9月19日(金)に金曜ロードショーで地上波放送予定です。
配信サービスを利用していない方でも、この機会にテレビで視聴できます。
📌 補足:続編『マレフィセント2』について
『マレフィセント』には続編 『マレフィセント2』(原題:Maleficent: Mistress of Evil) があり、2019年に公開されました。
前作に引き続きアンジェリーナ・ジョリーがマレフィセントを演じ、エル・ファニングもオーロラ姫役を続投。
物語はオーロラの結婚をめぐる出来事から始まり、人間界と妖精界の対立、そして新たな戦いへと広がっていきます。ミシェル・ファイファー演じるイングリス王妃の登場によって、よりスケールの大きな物語へと発展しました。
続編を観ることで、マレフィセントというキャラクターが「悪役」や「母性の象徴」にとどまらず、もっと広い意味で“守護者”として描かれていることが分かります。
1作目を気に入った方には、ぜひ合わせて鑑賞していただきたい作品です。

続編があるなんて知らなかった!これは観るしかないね!

2作目はさらに壮大になっていて、アンジーの存在感も健在だったよ。
📝 まとめ
映画『マレフィセント』は、ただの“ヴィランの物語”にとどまらず、悪と善の境界線を問い直すディズニーの新しい挑戦でした。
裏切りから復讐へ、そして母性的な愛情へと移り変わるマレフィセントの姿は、観客に「悪役にも背景がある」と気づかせてくれます。
映像美、アンジェリーナ・ジョリーの圧倒的な存在感、そしてオーロラ姫との心の交流。97分という短めの尺の中に、濃密な人間ドラマとファンタジーの魅力が詰め込まれています。
2025年9月19日の金曜ロードショー放送は、初めて観る人にとっても、過去に劇場や配信で観た人にとっても、改めてこの物語の深みを味わう絶好の機会です。
ハロウィンを前にした季節にこそふさわしい、ダークで美しい物語をぜひ体感してみてください。

“悪役”という一言では片付けられない複雑さ、それがマレフィセントの魅力だね。

映像も演技も今なお色褪せないわ。再評価するのにぴったりなタイミングね。
👉 ちなみに、ファンタジーの映像美を堪能できる作品としては『ウォンカとチョコレート工場のはじまり』もおすすめです。マレフィセントとは異なる“夢と魔法の世界”を描いており、観終わったあとにセットで楽しむと、より幅広いファンタジー体験が味わえます。
➡️ 映画『ウォンカとチョコレート工場のはじまり』レビューはこちら
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